研究概要 |
遠隔地に居住する思春期I型糖尿病患児が,親からの自立,就職・進学に伴う生活変化などの発達課題を乗り越え,糖尿病のよりよい自己管理を促進することを目的に,IT通信機器を導入しリアルタイムで,1対1で行う糖尿病教育を発展させた.本年度の研究実績を以下に示す. 【本年度の研究結果】 1)通信システムの整備状況と糖尿病自己管理に利用可能なIT機器についての調査 通信システムの利用可能性について,ISDN, IP電話,ADSL,携帯電話,携帯TV電話などの地域的な通信システムの整備状況の調査を行った結果,携帯電話が最も簡便に利用できることを確認した.さらに,糖尿病自己管理支援を有効にするIT機器の選択として,アークレイ社のe-SMBG(小型血糖測定機を携帯電話に接続し,iモードを用いて日々の血糖測定データと患児が記述したコメントをサーバーに転送し,ホームページ上で管理が行えるシステム)を選択した。 2)医療連携支援システムの整備 医療連携支援システムの整備として,対象事例の主治医にIT機器支援の適用について承諾を得た.さらに,研究として継続的に教育・支援を行う際の緊急時の対応やインスリン調整について医療の責任を明確にした. 3)継続支援が必要なI型糖尿病思春期対象事例の検討とIT機器通信の適用の実際 文献調査及び糖尿病サマーキャンプの参加から,思春期患児の自己管理上問題となる要因を抽出し,継続支援が必要となる事例を検討した.その結果,親からの自立を必要とする14歳女子,就職に伴う生活環境の変化が著しく血糖コントロールが不良な18歳男子,大学卒業と就職試験を控え心理的に不安定であるだけでなく強化療法の支援を必要とする21歳女子の3事例を支援の対象とした.これらの対象事例に,e-SMBGを適用し,それぞれの患児が持つ課題に合わせて,血糖コントロールに必要な知識・技術の提供と,心理社会的な継続支援を展開している.
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