本研究は、看護師が持った陰性感情が、どのような形で顕在化し、それを看護チームとして治療的に活用するためにはどのようなサポートが必要であるかを明らかにすることを目的として行われたものである。 6名の看護師より語られた10事例を質的に分析した結果、看護師の陰性感情が生じる場面は、「罵声を浴びせられる」「看護師としての能力を否定される」「離れさせてくれない」「無視される」「約束を破られる」「自傷行為をされる」の7つのカテゴリーに分けることが出来た。また、これらの場面で抱かれる看護師の陰性感情は、「患者の行動が分からない」「自責感」「攻撃から逃れられない」「恐怖」「落胆」「両価的な気持ち」「うんざり感」「苛立ち」「裏切られ感」「葛藤」の10種類であることが明らかになった。また、看護師の陰性感情は、関わりの全てが終了した後看護師の内面に残った気持ちの在りようによって4つの経過に分類された。「関係性が発展する」過程では『関係修復のための行動を自分(看護師)から取る』『関わりの途中で同僚からサポートを得ている』が影響し、「患者への積極的な関心を持ち続ける」過程では『自己洞察のプロセス』が影響していた。また、「対処方法を会得する」過程では『患者の回復』『攻撃そのものの減少』『病理の理解』『対処技術の獲得』『気持ちの表出』『困難さの共有』が影響していた。そして、「陰性感情のまま心に残る」過程では『サポートが無いと感じる』『気持ちが表出できない』『自分の対処への後悔』『サポートを受けることに対する受動的な姿勢』が影響していた。 これらの結果から、看護師が陰性感情を患者あるいは看護師のどちらの問題として捉えているかを認識することの重要性、陰性感情を抱く看護師に対し、患者との関係性を発展させるためのサポートを看護チームが行うことの必要性、看護チーム内でのサポートの限界が示唆された。
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