研究概要 |
本研究では、慢性疾患に罹患している日本人中高年者の医療ケア上の自己決定および行動の特徴を類型化し、その様式を明らかにすることを目的とした。平成14年度は、慢性疾患に罹患している日本人中高年者の医療ケアにおける自己決定認識と行動の類型を明らかにするために、まず平成13年に実施した研究の再分析を行った。その結果、先行研究では、医療ケア上の自己決定の実態を測定するために、EndeらのAutonomy Prefarence Indexを用いたが、Endeらの研究報告(1989)と比較して得点平均が高い結果となった。また、因子分析の結果、4因子が抽出された。第1因子「治療に関する説明希求」、第2因子「病状が悪化しているときの知らせの希求」、第3因子「治療上の問題に関する自己決定希求」、第4因子「療養上の問題に関する自己決定希求」と解釈した。解釈された各因子の標準因子得点を算出し、人口学的変数、医師、医療者との関係や治療に対する満足度、その他の変数による各群間の比較をするため統計的分析を行った。その結果、第1因子においては、性別による主効果(F(1,271)=7.72,P<0.01)、第3因子においては、年齢による主効果(F(1,271)=8.49,P<0.01)が有意であった。また、第3因子では、教育年数と、医師との関係性、医師以外の医療者との関係性、治療に関する満足度においても統計的差がみられた。しかし、自己決定得点を基準変数として、属性、医師、医療者との関係性および治療に関する満足度、HLC得点、APIの第1因子から第4因子の標準因子得点の合計点を説明変数とした重回帰分析では有効な決定係数を得ることはできなかった。これらのことより、日本人の自己決定における認識と行動には、患者と医療提供者との関係性の影響があり、「本音とたてまえ」のような特徴的な自己決定様式があるのではないかと推測された。
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