精神科看護師が入院患者から受ける暴力的行為の実態と看護師の態度を明らかにすることを目的に本研究を行った。具体的な研究手法としては、1平成14年度に精神科看護師18名に暴力の体験に関する面接調査を行い、質問紙作成に役立て、平成15年度に国内8つの精神科病院の看護師(准看護師も含む)629人を対象に本調査を行った。データの分析にはSPSS ver11.0を用い、連続的変数にはMann-Whitney U検定、名義尺度にはχ二乗検定を行った。回答のあった377人(有効回答率60%)のうち、実に50.7%が身体的暴力(平手で叩く、蹴る、げん骨で殴る等)を、68.4%が言語的暴力(罵声、非言語的威嚇等)を、32.4%が性的暴力(わいせつな発言、体を触る等)を過去1年以内に受けており、暴力は頻度の高い問題であることがわかった。若い看護師や女性看護師がより暴力の被害に遭っており、新人教育に暴力関連の教育プログラムを取り入れる必要が考えられた。勤務部署別の分析では、患者属性の違いによって発生する暴力の特徴が明らかになった。暴力被害にあった群のほうが、仕事に満足しておらず、また今後も勤務することに積極的ではない態度を示しており、暴力被害が看護師の職務満足や職務継続意志を損なうものであることが明らかになった。暴力に関連する看護師の認識として、6つの因子が抽出され、暴力体験との関連がもっとも強く示された因子は、組織的サポートであった。暴力を体験していた群は職場のサポート体制についての評価が低く、暴力問題に対する組織的取り組みが重要であることが示唆された。重要視していたサポート内容は、患者への関わりについてのアドバイス、被害の話を聞いてくれる人、看護者の権利擁護のための法的な相談や情報の入手などであり、これらの対策の有効性を今後検証していくことが課題として見出された。
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