本研究は、昨年度と本年度にわたり、我が国における学校体育のジェンダー・フリー実現に資する基礎的なデータの収集とその分析を目的としている。昨年度の成果を踏まえ、本年度は以下の通りに研究を進めた。 1.青森県内にある男女共学の中学校・高等学校(中学校185校、高等学校102校)を対象とした体育授業に関するアンケート調査の実施(回収率:中学校63.8%、高等学校73.5%) 調査票は3種類作成し、調査票(1)では、保健体育科主任に各学校の生徒数やクラス編成の状況などの実態を尋ねた。調査票(2)は各保健体育科教員に対する個人調査であり、男女共習授業の経験や、男女共習授業に対する意識などを尋ねた。調査票(3)では、各学年の代表者に各運動領域(種目)ごとの授業実施形態、グループ編成、授業内容、評価の基準について、男女区別の有無を尋ねた。特に調査票(3)への回答をみると、男女共習授業であっても、評価を男女同一基準で行っている学校もあれば、技能の観点についてのみ男女別基準を採用している学校もあり、さらには、運動領域(種目)による違いもみられるなど、今後の男女共習授業を考える上で非常に興味深い結果が得られた。なお、報告書については現在作成途中であり、来年度発表予定である。 2.ジェンダー・フリーな体育授業構築へ向けた試み 青森県内のある中学校において、ジェンダーの視点から年間計画の見直しと授業方法の検討を行い、体育授業を実践した。授業観察した結果、生徒達は性別を過度に意識することなく運動に親しみ、また、観点別評価項目ごとに検討したところ著しい男女差は認められなかったことから、本研究において設定した授業方法に基づく授業に一定の効果があるものと結論した。
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