研究概要 |
本研究の14年度当初の研究計画としては,高齢者を対象に上肢と下肢の筋力,および神経伝導速度を測定し,科学的データに基づいた加齢に伴う末梢神経系の機能低下の現状を把握することであった.しかし,現有設備の神経伝導検査ユニット(NEC三栄)が故障して使用不能となったため,本年度は神経伝導速度を測定することができなかった.そこで,急遽研究計画を変更し,高齢者の末梢神経系の機能低下に関する検討については,来年度に別予算で購入するニューロパック(日本光電)を用いて行うこととし,本年度は15年度研究計画にある高齢者の中枢内情報処理過程について認知機能の指標となる事象関連電位P300と反応出力系の指標である反応時間を用いて研究を行ったので,その成果の一部を以下に示す. 1.高齢者の反応時間は健康成人と比較して顕著な遅延を示したことから,加齢に伴い反応実行過程が低下することが分かった. 2.高齢者の事象関連電位P300潜時が健康成人と比較して顕著な遅延を示したことから,中枢内情報処理過程の中でも,特に,加齢に伴い認知機能に関する刺激評価時間が遅延していることが分かった. 3.高齢者の事象関連電位P300振幅が健康成人と比較して顕著な低下を示し,頭皮上分布も健康成人が頭頂部優位であるのに対して高齢者は中心部から前頭にかけて均一化を示したことから,加齢に伴い脳に機能的変容が生じていることが示唆された.
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