1.目的:専門家による行動変容支援が、行動自体の変容への働きかけであると被援助者にはストレスとなる可能性がある。真の行動変容の成功のためにストレス行動特性の変容やソーシャルスキルの習得が必要であると考え、カウンセリング法と取り入れた介入研究を行い、(1)行動変容の有無、(2)ストレス行動特性の軽減、(3)セルフケアの自己効力感の向上を検討することを目的とし、生活習慣病予防の効果的なシステムづくりを目指している。 2.方法:本年度は予備的研究として健常な成人男女を対象に、運動、栄養、ソーシャルスキル、心の健康支援の4教室を組み合わせた健康増進支援講座による介入を実施した。講座への参加と質問紙調査への協力は、第1回は実験群n=22と対照群n=68、第2回はn=14とn=12、第3回は実験群のみn=29であった。 3.得られた知見と今後の計画:介入前の質問紙調査の結果、保健行動の心理社会的要因やストレス行動特性は、実験群と対照群の間に有意な得点差はなかった。実験群は介入前後で、対人依存型行動特性に有意な得点の低下がみられ、依存型から自己決定型へと変化した。自己価値感は有意傾向で得点の上昇がみられ、有意ではないが、抑うつ度の軽減や問題解決度の向上、日常苛立ち事の低下の傾向があった。グループカウンセリング記録から事例をみると、回を重ねる毎に気づきが深まり、自己表現や他者との気持ちのコミュニケーションがとれていた。健常人を対象としたため具体的な行動変容はみられなかったが、本介入により悪性ストレスをためやすい行動特性から、良性ストレスとして活用できる行動特性へと変容しうると考えられた。本年度の予備的介入をふまえ、次年度は生活習慣病群やその予備軍を対象として介入を実施し、行動変容や身体的検査値の改善の有無および変容した行動や改善された検査値の維持の可否について追跡調査も行っていく。
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