本年度は、有酸素性運動の頻度とトレーニングによる適応現象との関係を明らかにするために、1週間の総運動量を同じにした場合、低頻度で長時間の有酸素性トレーニングと、高頻度で短時間の有酸素性トレーニングの2種類を行い、運動による適応現象(特に負の適応)に運動頻度が及ぼす影響を検討することとする。研究対像は、健常な成人女性10名で、うち5名は週に3日、1回につき100分の運動を行い(低頻度・長時間群)、残りの5名は週に5日、1回につき60分の運動(高頻度・短時間群)を行った。トレーニング期間は8週間とした。運動強度は両群ともに個人の推定最高心拍数の60-70%とし、トレーニングは固定式自転車で行われた。毎回のトレーニングの前に、体重、生体インピーダンス法による体脂肪率、安静時心拍数を記録した。その後、漸増負荷運動テストを行い、運動負荷と運動時心拍数との関係から各個人の推定最高心拍数の75%に相当する仕事率(PWC75%HRmax)を有酸素性作業能力の指標として求めた。トレーニング中は、心拍数を連続的に記録し、1分毎の値を算出するとともに、トレーニング終直前の主観的運動強度を記録した。また被験者には、基礎体温、睡眠時間、主観的な疲労度などを毎日記録させた。 その結果、低頻度・長時間群および高頻度・短時間群ともに、トレーニング経過に伴い有酸素性作業能力の指標であるPWC75%Hrmaxは、有意に増加した。またトレーニング効果の時系列データを単回帰モデルにあてはめ近似式を求めたところ、その傾きに2群間の差はみられなかった。 次年度においては、本年度収集したトレーニング効果に関連した指標の時系列データを、運動によるプラスの効果とマイナスの効果の時定数が求められる数学的モデルを用いて評価することにより、トレーニングを行うタイミングと運動による負の適応現象について検討を加える。
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