本年度は、昨年度行った1週間の総運動量を同じにし、運動頻度と運動時間を変化させた2種類のトレーニングにより得られたトレーニング効果に関する時系列データを用いて、運動によるプラスとマイナスの影響の時定数がそれぞれ求められる数学的モデルを使った評価を行った。昨年度の有酸素性トレーニングは、4週間行われ、低頻度長時間トレーニング群(5名)は週に3日、1回につき100分の運動を、高頻度短時間トレーニング群(6名)は週に5日、1回につき60分の運動を行い、毎回のトレーニングでの有酸素性作業能力の指標として、漸増負荷運動から得られたPWC75%HRmaxを記録した。なおトレーニング群は両群ともに、トレーニング終了後も脱トレーニングとして4週間は漸増負荷運動テストのみを週に3回継続した。 数学的モデルによる結果、1週間の総運動量が同じでも、トレーニングの頻度および時間、あるいは個々の被検者によって、算出された1回の運動によるプラスの影響の時定数およびマイナスの影響の時定数はさまざまな値を取ることがわかった。一方、2つのトレーニング群について、モデルから求めた指標を比較すると、低頻度で長時間の有酸素性トレーニングのほうが、高頻度で短時間の有酸素性トレーニングに比べて、運動によるマイナスの影響の時定数が有意に長くなった。またモデルから求めた運動によるプラスの影響の時定数については、トレーニング群2群間で有意な差は認められなかった。 今年度の研究成果から、筋力トレーニングにおいて重要視される運動を行うタイミングおよびダメージからの回復後(超回復)に次のトレーニングを行うことがトレーニング効果を高めるという原則が、有酸素性トレーニングについても当てはまることを、実際のトレーニングにより得られた生理学的反応に数学的モデルによる評価を施すことにより検証した。また特に有酸素性トレーニングの1回の運動時間が長いことが、運動によるマイナスの影響(生理学的ダメージ)を大きくする可能性も示唆された。
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