一定強度で静的筋収縮を持続した場合、活動筋群の律動的な群化放電を伴った生理的振戦(Enhanced Physiological Tremor : EPT)が観察される。下腿三頭筋の等尺性収縮を持続してEPTを誘発させ、特にその発現前後の神経・筋活動の変化と循環系応答との関連性について、微小ワイヤー電極を用いた筋電図記録、膝窩動脈血流速度、血圧等の計測から検討した。静的筋収縮の持続で明瞭なEPTが誘発され、10-20秒間持続した後に収束・停止した。EPT時にみられる筋放電は、群化放電(grouped discharge)とそれに続く相対的にサイレントな部分が律動的に繰り返された。群化放電期間は約50-75msで、休止期間が45-65msであり、サイクルは約8-10Hzであった。これらEPTの特徴から、8-12Hzで発火する運動ニューロンの同期化とそれに関連した伸張反射弓の変動や、上位中枢から運動ニューロンへの律動的な入力等がEPT発現に関与するものと推察された。LGの運動単位活動をEPT前後で比較すると、表面EMGと同様にEPT後に活動量は有意に減少し、特に運動単位の活動参加数が少ないことが観察された。EPT前後で運動単位の活動様式が異なることが推察された。またEPT前後の循環応答を検討した結果、EPT期間中に心拍数は有意に増大したが、EPT終了後に速やかにEPT前のレベルまで減少した。平均血圧は概ねEPT直前に大きく増加し、EPT中及び後に減少した。膝窩動脈径と血流速度から算出された血流量はEPT後に有意に増加し、血管コンダクタンスも増加した。EPTによる動的筋収縮の反復(ミルキングアクション)が筋血流を増大し、代謝産物を除去させたことによりEPT後の神経-筋系の活動に影響したのではないかと推察された。これらの成績は、第57回日本体力医学会大会および第10回日本運動生理学会大会で発表した。
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