琉球は地理的・歴史的にもアジア太平洋地域の要として位置づけられる。同地域の舞踊は手指によって多様な心象を表現するという共通の特徴があり、これまでにも手指をはじめとする舞踊技法の類似性が指摘されてきたが、その特性を明らかにした研究は少ない。そこで本研究では、琉球舞踊(祭祀芸能を含む)の技法を最小限の意味のまとまりである所作単元に分類し、1)単元名称、2)意味、3)映像、4)動作特性、5)演者の身体意識等の諸情報が相互に参照できるデータベースの作成を試みた。初年度(14年度)は、単元名称の考案と確認を中心に聞き取り調査を実施した。概要は以下の通りである。 (1)古典舞踊の単元名称の考案と確認 無形文化財技能保持者(66歳・女性)および伝承者数名を対象に、単元名称の考案と確認、単元を演じ伝承する際の身体意識を聴取した(8月〜3月)。成果の一部を、日本体育学会スポーツ人類学分科会キーノートレクチャーにて報告した。 (2)データベースの実践教育への適用 作成中のデータベースを、舞踊の体験的教育の教材として試用(群馬県立女子大学講座)。アンケート調査による学習効果を検証し、その成果を比較舞踊学会大会において報告した。 (3)祭祀芸能の調査報告 中城村津覇の獅子舞の所作単元を調査し、単元名称と動作特性、所作単元の連結様式(振付)をまとめ公表した(『沖縄文化』2002)。名称の記録に際しては、伝統的な名称をもつ単元と名称をもたない単元の特性を明らかにし、名称の有無を規定する要因を考察した。
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