本年度の研究目的は、スポーツカウンセリング事例の収集ならびに文献研究、教育プログラムの実践であった。はじめに、先行研究においてストレス調査の対象となった、大学スポーツ選手363名のうち、ストレス対処パターンを持っておりかつ周囲の社会的資源が積極的に活用できる等の条件から6名のスポーツ選手を抽出し、彼らに対して面接マニュアルを用いた介入調査を実施した。そこでは、(1)ストレス過程の把握ならびに(2)ネットワークを用いたストレス過程への介入を実施した。これらの事例検討からは、ネットワークマップを用いた心理的介入により選手のストレスマネジメントが可能となることが示唆され、この成果を、日本体育学会第53回大会において発表した。続いて、ソーシャル・サポートとスポーツカウンセリングの理論的背景を検討するため、文献研究を行った。従来のチームビルディングには組織風土へのアプローチ(間接的アプローチ)とメンバー個々に働きかける直接的アプローチがあること、そしてその介入理論の整備のためには組織開発論やスポーツ社会学の研究知見を援用する必要のあることが明らかとなった。それを踏まえ、スポーツ心理的サポートの一環として実施したチームビルディングの実践事例に対して、組織開発の専門家よりコメントならびに情報提供を受けた。この成果は日本スポーツ心理学会第29回大会ミニシンポジウムにおいて公表された。さらに、コーチならびにスポーツ心理担当者について、選手のサポートネットワークの観点からその役割と機能を再定義し、大学水泳チームに対する心理的サポートの実践研究を行った。その結果、チームビルディングの手法を取り入れた心理的サポートプログラムが、選手のストレスマネジメント教育に役立つこと、また選手の試合場面での実力発揮に役立つことが示された。このプログラムの概要ならびに成果は、大阪体育大学紀要に掲載された。次年度は、新入生に対するストレスマネジメント教育プログラムの効果について検討される予定である。
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