本研究の主たる関心は、彼らの問題解決に役立つ他者との関係のあり方、すなわちソーシャルサポート(SSと略記)を、そのネットワークの観点から探求し、スポーツカウンセリングの実践形態として位置づけることにある。研究期間2年目にあたる平成15年度は、SSを活性化させる1つの方法として、構成的グループ・エンカウンターに着目し、体育・スポーツ領域での活用に向けて、文献研究により現状と課題を分析した。さらにSS活用のためのチームビルディングの実践として、構成的グループ・エンカウンターを大学体育授業に適用し、大学新入生の適応支援に果たす役割について検討した。これらの文献研究および実践研究の成果は、それぞれカウンセリング学会第36回大会にて発表した。続いて、SS活用による心理的サポートの可能性を探るため、体育系大学生(N=10)を対象に、独自の面接マニュアルを用いたインタビュー調査を行い、SSの具体的内容および他者関係にまつわるエピソードの聞き取りを行った。その結果、異なるサポートタイプの提供者としても、同一の「重要な他者」が挙げられることや、サポート提供を受けた実質的な頻度よりも期待感がSS満足度を規定することなどが分かった。ストレスマネジメント教育プログラム作成時に役立つ、具体的な基礎資料を得た。またライフラインの分析では新入部員の環境適応、負傷・疾病からの復帰、実力発揮といった3つの場面においてSS活用を基盤とする心理的介入が必要であることが示唆された。これら2つの研究は、それぞれ日本体育学会第54回大会にて発表した。今後は、これら4つの研究成果と、初年度開発されたSSネットワークマップをツールとして取り込んだ、独自のストレスマネジメント教育プログラムを開発し、その効果を検討することが課題となった。
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