本研究は、スポーツ選手の問題解決に役立つ他者関係のあり方をソーシャルサポート(SSと略記)の観点から探求し、スポーツカウンセリングの実践形態として位置づけることにある。研究期間3年目にあたる平成16年度(最終年度)は、研究1から研究5のまとめがなされた。まず、研究1ではスポーツカウンセリングの理論的背景に関する文献研究を行い、体育・スポーツ領域におけるSSの動向およびメンタルトレーニング指導に役立つ知見を整理した。研究2では、問題を抱えてスポーツカウンセリングルームに来談した選手に対する相談事例の検討を、研究3では大学スポーツ選手(N=11)に対する半構造化されたインタビュー調査を行った。これらの実証研究では、ストレス場面におけるSSの機能・役割について詳細な検討を行うため、対象者の他者関係を模式化して提示するツール(サポートネットワーク・マップ)を開発した。その結果、競技環境における他者関係がストレッサーとなりうると同時に、問題解決に役立つ資源にもなりうることが示唆された。研究4では、総合大学の体育授業において、SS活用のためのチームビルディングを実践し、その効果を検討した。その結果、構成的グループ・エンカウンターの手法に準拠したチームビルディング・アプローチが、大学新入生の適応促進、精神的健康の維持、参加者間のSS授受の活性化に役立つと示唆された。最後に研究5では、研究1から研究4までの知見をもとに、・サポートネットワーク・マップを用いた他者関係の吟味、メンタルリハーサルを用いた問題解決のシミュレーションからなる、独自のストレスマネジメント・プログラムを開発し、介入研究を行った。以上の成果は、スポーツ心理学研究、ギリシャで行われた2004Pre-Olympic Congress、日本カウンセリング学会等において発表された。
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