研究概要 |
本研究は,蹴動作の発現時期であると考えられる歩行開始前後の時期から3歳前までの乳幼児を対象とし、発現時期、発現に関与する身体的能力、動作様式の特徴と発達に関する実験的分析、および、遊びにおける蹴動作の発現、質問紙法による他の動作との発達の関連を検討することを目的としている。平成15年度は、片足身体支持と蹴動作の発現に関する実験的分析、自由遊びにおける動作の種類と頻度の検討と運動保育との関連について分析した。主な結果を纏めると以下のようになる。 1.蹴動作は、1歳前半の幼児も可能であり、下肢の筋力の発達が動作の可否に強く関与すると考えられる走・跳動作よりも早期に発現した。したがって、蹴動作は、立位や歩行において、片足身体支持時間中の重心移動や姿勢の安定が得られ、蹴り足の自由度が増大すると考えられる歩行開始から2〜3ヵ月前後、つまり、1歳前半の時期から可能になり、立位における片足身体支持能力の発達が、その発現に大きく関与することが示唆された。 2.1歳児の運動遊びにおける操作系動作の種類と頻度、及びその加齢的変化を分析し、運動保育に必要な環境構成について検討した結果、活動性の高い男児は、加齢とともに移動系動作時間が増大し、上肢の操作系動作の頻度も増加した。下肢の操作系動作の頻度については、上肢と比較して少ないが、適切な遊び環境を設定することにより、1歳児でも蹴る遊びの頻度が高まることが示唆された。そして、遊具や他者との関わりの中で、幼児が活発に運動を展開できる遊具や遊びの場があれば、様々な運動を経験する機会に発展するものと推察された。同時に、家庭や保育の中で保護者や保育士が、ボールなどの遊具を使って、遊びながら大人とのコミュニケーションを行うことが可能になる1歳頃の時期から、積極的に運動遊びを実践していくことが重要であると考えられた。
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