14年度は国内の大学、博物館等の研究機関を主な対象として資料収集を行った。実際に資料収集に訪れた研究機関は複数の大学や研究所に渡るが、なかでも早稲田大学人間科学部のスポーツ人類学研究室、東洋大学のアジア文化研究所などが中心となった。上記機関は当該研究テーマに近い研究領域を有する研究者がいることから、資料も充実し、平成15年度の調査においても、再度の訪問が必要になると思われる。 また、韓国と中国朝鮮族自治州をそれぞれ1度ずつ訪れ、当地における資料も収集した。 一方、日本国内において韓国人が集団で居住している地域におけるフィールド調査も実施した。複数のテコンドー道場などを訪問し、インタビュー調査を行った。 未だ調査の途中にあり、結論を出すには更なる慎重な検討が必要である。しかし、現時点である程度明らかになりつつあることもある。1960年代ころから、国を挙げてテコンドーを世界に普及させようとする動きが著しく、その当時のテコンドー界の雰囲気を、テコンドー道場の現場で普及、指導にあたっていた複数の師範からも話を聞かせてもらうことができた。特に60〜80年代の日本では、北朝鮮、韓国それぞれに伝わる異なる2つのスタイルが競うように拡大を繰り広げていた様子が、実践者のレベルで話を聞くことができた。 中国の朝鮮族自治州においても同様、テコンドー、相撲共に韓国、北朝鮮の二つのスタイルが共存している。92年の韓国と中国の国交正常化以後、同地区では韓国の経済的な援助の下、韓国式のテコンドーや相撲がより多くの支持者の獲得に成功している。 日本の例にしろ、朝鮮族自治州の例にしろ、いずれもスポーツとしての競技の特質や、条件によって実践者レベルで徐々に普及するのではなく、南北の政策的な影響が普及にも色濃く確認された。
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