15年度は国内で資料収集を行うと共に、昨年より資料の提供を受けている韓国の大学、図書館などを訪れ、韓国語の文献や資料を入手した。ただし、多くの研究機関や組織においてインタビューを重ねて来た調査実績に比べ、入手できた資料やその成果は韓国の伝統スポーツ組織に関するものでありながらも、中には本研究の論点やや距離があるものもあり、必ずしも満足できるものではなかった。 しかし、韓国の伝統スポーツの組織を考察する上で、数々の関係者から得た情報には、60〜70年代における韓国内でのテコンドー協会の普及活動や活動方針におけるナショナリズムの影響、朴政権などとの関わり等が確認され、貴重な第一次資料となった。 また、90年代にシルムの組織が受けた経済危機の影響等について、シルム連盟の当事者から提供された資料は、組織が抱える問題にリアルタイムで触れることができたことも有意義な成果だと思われる。 なお、平成15年度は日本においてテコンドー組織が諸々の理由から分裂してしまった。その一方で、朝鮮半島では、南北のテコンドー組織が、ルールや名称などの南北間の統一をめぐって協議を始めるという大きな進展を見せた。また、韓国のテコンドー組織の頂点に君臨し、世界テコンドー連盟の会長、世界オリンピック委員会副会長でもある金雲竜氏が連盟の資金を横領していたことが発覚した事件など、組織が構造的に抱える問題点が可視化される事件が相次ぎ、組織を考察する上での様々な糸口に恵まれた。
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