本研究では、長期にわたる運動の実践が循環器系疾患者の血液流動性に及ぼす影響を検討した。対象者は、循環器系疾患女性18名であり、そのうち10名(63.8±7.8歳)は筆者らが提供してきた運動プログラムに5〜10年間参加してきた者であった。血液流動性は、人工的な毛細血管モデル(流路深4.5μm、流路深の中央部での流路幅7μm、流路長30μmの微細な溝が8736本並列配置されているシリコン単結晶基板に光学研磨したガラス基板を圧着させることにより生まれる流路)を全血100μlの血液が流れる時間と定義して検討した。全血100μlの通過時間は運動群で33.8±4.0秒、非運動群(n=8:63.3±8.0歳)で44.7±6.8秒と運動群で有意に速かった。また、運動群のTC(201.0±28.4mg/dl)、LDLC(118.1±27.0mg/dl)、TG(75.6±24.9mg/dl)、LDLC/HDLC(1.83±0.65)は、非運動群(TC:234.1±34.8mg/dl、LDLC:145.8±24.9mg/dl、TG:153.5±66.0mg/dl、LDLC/HDLC:2.57±0.46)に比べて有意に良好であった。運動群と非運動群の全データについて、血液通過時間(41.5±6.0秒)は白血球数(5988.9±2091.4/μl)、血小板数(24.9±7.1万/μl)、LDLC/HDLC(2.54±0.86)と有意に相関した(r=0.68、r=0.54、r=0.47)。以上のことから、循環系疾患者が長期にわたって運動を実践することで血液流動性が改善されることが明らかになった。血液流動性が改善される要因としては、血清脂質の改善、白血球の粘着性や血小板の活性化の抑制などが考えられた。
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