最終年度の本年度は、過去2年間の研究結果をふまえ、(1)「複数地域の比較」および(2)「アフリカ森林減少に関する仮説的モデルの構築」、を中心に研究を計画、実施した。具体的には次のような結果をえた。 1.前年度までに詳しい調査をおこなったエチオピア西南部の森林地域に加え、森林とサバンナがモザイク状に分布する西アフリカのギニアサバンナ地域(ギニア、シエラレオネ)について、複数の関連資料・文献を参照しつつ実態の把握をおこない、両地域の20世紀の森林利用と森林動態の比較を試みた。その結果、両地域の森林動態の説明要因となるいくつかの共通点・相違点を抽出することができた。共通点として特筆すべきものとして、両地域とも治安(戦乱、社会不安)という要素が数十年単位でみた森林利用、森林動態に大きな影響を与えていることが明らかになった。人口分布、集落動態、道路の建設、森林資源採取量など森林動態に大きく影響する他の要素は、両地域とも治安状況の変化に関連して変化してきていることがわかった。これは両地域に限らず、20世紀アフリカの森林変化をみる上で注目すべき特徴であると強く予想される。 2.上の結果をふまえ、アフリカ森林の動態を説明するシミュレーションモデルを検討し、学会報告をおこなった。このモデルは改良の余地はあるものの、空間的なシミュレーションを加えた点も含め、アフリカに特徴的な森林変化を説明するものとして本研究の独創的な成果であるといえる。 以上の結果は、複数の学会発表および論文・著書の形で公表した。
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