研究概要 |
平成14年度にはまず,島根県を調査地域に設定し,同県の土木業者の経営データ(財務諸表等)を体系的に収集し,一部の解析作業を進めた。これらのデータの多くは現在,筆記による転写しか認められていないため,14年度はデータの収集に多くの時間を費やし,本格的な解析作業は15年度以降になる。 また,同年度には全国の公共投資・政府間補助金に関するデータ収集を行い,定量分析を行った。分析の結果,1)国土縁辺部の道県では90年代前半において,景気後退に伴う民間需要の縮小を公共需要の拡大によって補ってきたが,90年代末期以降の公共投資削減政策により,近年は他地域以上に需要が縮小している,2)過疎地域町村の公共投資の動向を見ると,90年代前半はバブル景気の崩壊による大型プロジェクト事業の縮小によって特徴づけられ,90年代末期以降は全体的な公共投資水準そのものの縮小が生じている,という2点が明らかになった。 一方,平成15年度以降の本格的なフィールド調査の実施に向けて,平成14年度は岐阜県内の一山村の土木業に関する現地調査を行った。この調査では,70年代から90年代にかけて土木労働力の中核をなしていた昭和一桁世代の引退,公共投資の削減,入札および建設業に関する制度改革の影響によって,90年代後半以降,各業者の労働力編成が兼業農家の日雇労働力を中心とした編成から青壮年層を中心とした正規雇用労働力を中心とした編成にシフトしていることが明らかになった。この労働力編成の再編は公共投資の削減と並んで各業者にとって大きな経営圧力となっている。 以上の調査結果を踏まえて,平成15年度は上記した島根県内の土木業者の経営データの解析作業を進め,いくつかの調査地域を選定し,フィールド調査を進めていく予定である。
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