研究概要 |
平成16年度は3カ年の研究期間の最終年であるが,公共投資や土木業に関する統計資料や各業者の財務諸表の資料が公表されるまでにタイムラグが存在することもあって,集計量レベルでは研究期間内において,予想していたような顕著な土木業者の再編成や地域経済・社会への影響を検出することはできなかった。 しかし,研究期間中に公表されるようになったものを含め,3年間の間に土木業および公共事業に関する資料収集を進めると共に分析方法をある程度,確立することができた。その成果の一部として(1)JVの幹事会社の違い(発注機関の域外業者と域内業者)による下請編成の違いの分析,(2)過疎概念の変質・制度化との関係からみた公共投資に偏重した地方交付税の配分構造の形成過程の分析,(3)土木業者立地の空間パターンと発注機関の領域編成との関係の分析,を3本の論文として発表した(1本は投稿中). また、本年度はアウトサイダーの進出と市町村合併による発注の地域単位の再編を経験し,今後予想される土木業者の変動に対しで示唆的な動きを示していると考えられる,岐阜県W村についてインテンシヴなフィールド調査を実施した.本年度におけるW村での関係者に対するインタビュー調査と裏付けのための資料分析により,W村における業者間調整のシステムが,どのような論理と背景の下で確立されたのかを明らかにすることができた.現在.ごの成果に関する論文は投稿中である。また本年度の調査結果より,現在のW村における土木業の再編は公共事業の減少に加えて,この業者間調整のシステムがどのようにして破綻していったのか,という点から最もよく説明できると考えられることが明らかになった。しかしW村における土木業の再編が現在まだその途上にあることもあり,前述論文の公表を待って,W村における土木業の再編に関する論文を発表する予定である.
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