本研究の課題は、在日韓国人の企業活動を取り上げ、日本の国家的都市システムとその空間形態を明らかにすることである。分析に際しては、在日韓国人の企業活動の空間的分布パターン、そして空間的分布パターンと企業属性および産業部門との関連性、といった2点に注目した。分析の結果、次の3点が明らかになった。第1に、ランクサイズ曲線を用いて事業所の空間的分布パターンを分析した結果、日本の主要都市は、3大都市圏の主要都市に集中しており、おおむね3つの階層に分類されること、3大都市圏と地方都市圏における事業所分布の格差がおおむね1980年代に拡大したこと、そして在日韓国人の企業活動からみた都市の秩序(順位規模)が日本の一般企業の事業活動からみた場合とは異なっていること、の3点が明らかになった。第2に、一次元配置分散分析を用いて都市群と企業属性との関連性を分析した結果、三大都市圏と地方都市圏をそれぞれ拠点とする企業活動は、従業員数、資本金、売上高などの企業規模においてその違いが統計的に有意であることが明らかになった。第3に、特化係数と分散分析を用いて都市群と産業部門との関連性を分析した結果、在日韓国人の企業活動を支える産業は、3大都市圏と地方都市圏ごとに分化が明瞭であることが明らかになった。3大都市圏では多岐にわたる産業において事業活動が展開されていることに対して、地方都市圏ではプロデューサー・サービス部門が相対的に少なく、食料品および衣服関連などの住民の生活に密着した産業が中心で、偏った産業によって企業活動が展開されることが明らかになった。
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