今年度の研究では、在日韓国人企業の事業所分布を取上げ、産業属性・人口規模との関連性を分析した。その結果で得られた知見は、次の3点である。 第1は、産業構造から得られた知見である。因子分析を用いて、産業構造と都市との関連性を分析した結果、在日韓国人企業の産業別分離形態が明瞭に現れた。第I因子と第IV因子はサービス業および小売業を中心とする第3次産業活動を示し(全変動量の73%)、第II因子と第III因子は、製造業および建設業を中心とする第2次産業活動を示し、産業別における明瞭な分離形態が現れ、在日韓国人企業は、非生産部門において事業所配置を積極的に推進してきたといえる。 第2は、空間的分布パターンから得られた知見である。関東地方ブロックと近畿地方ブロックの都市間の違いも明瞭に現れた。東京を中心とする東京大都市圏の多くの都市は第I因子で抽出されたのに対して、大阪・神戸を中心とする近畿地方ブロツクの多くの都市は、第II因子および第III因子で確認された。事業所配置から見た限り、全国レベルにおける在日韓国人企業の経営活動は、製造業活動(第II因子)よりも非製造業活動(第I因子)を中心に展開されており、事業所配置の拠点性として東京の評価が非常に高いことが容易に理解できる。 そして第3は、人口規模と事業所分布との関連性から得られた知見である。在日韓国人企業は事業所配置において、少なくとも韓国・朝鮮国籍人口規模を重要なファクターとして考慮していることが間接的に裏付けられる。とくに大阪と東京の位置づけが明瞭に異なる。近畿地方の多くの都市では、都市別人口規模や日本企業の事業所数から予想される以上に在日韓国人企業の事業所数が大きい。しかし大阪は、在日韓国人企業の事業所配置の拠点都市として大阪の評価が相対的に低いことを間接的に示唆するものである。
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