本研究費により、パーカッション式オールコアボーリング掘削装置を購入し、愛知・岐阜・三重県等において、深度5 10mのオールコアボーリングを掘削した。コアの粒度や電気伝導度、珪藻遺骸群集などを分析し、養老断層系養老断層・桑名断層・四日市断層の極浅層地下構造を明らかにした。また、既存ボーリングコアをも含めて、多数の放射性炭素年代測定を核燃料サイクル機構と共同実施し、断層活動史、および、断層沈降側(濃尾平野)の埋積史を従来にない高精度で復元することに成功した。なかでも桑名断層においては、過去7回の活動時期が推定され、断層活動間隔に著しい規則性が見い出された(鳴橋・須貝ほか、投稿準備中)。また四日市断層は、従来考えられていたより数倍も大きな速さで変位してきており、養老・桑名断層に匹敵することが解明された(大上・須貝、投稿準備中)。また、濃尾平野の埋積速度が極めて大きく、木曽三川によるデルタの前進速度は、メコン川や黄河など世界の大河川に近いことが解明された(山口・須貝ほか、投稿中)。こうした堆積環境条件が断層活動の痕跡の保存に極めて有利に働いてきたことも明かとなった。他方、トルコの北アナトリア断層においては、199年8月地震断層の活動履歴解明のためのトレンチ掘削調査に8月に参加し、同地震が、当該地域で発生しうる最大規模ないしそれに近い規模の地震であったことが、裏付けられた。成果は米国地球物理学連合学会で報告された。
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