Loving Touchと呼ばれる母親が子どもをなでるような接触刺激を与えると攻撃性が少ないラットが育ち、ヒトでは未熟児の成長を促す効果があることが報告されている。衣服は人間にとって最も身近な常時接触する刺激物であるから、恒常的に衣服を着用し続ける現在の我々の生活を鑑みれば、どのような衣服素材を選択し、着用し続けるかという問題は日常的であるあまり軽視しがちであるが、衣服素材の肌触りは重要であろう。そのため、湿潤素材の肌触りが衣服の着用快適感に及ぼす影響を明らかにするために、(1)局所快適刺激装置の作成と被験者実験および衣服素材物性値測定による快適性評価法の検討、(2)これらの素材の吸湿・吸水による快適感変化の測定と積極的快適感誘発衣服の設計指針の作成を計画し、遂行した。 [衣服素材の吸湿・吸水による快適感変化の測定と快適衣服の設計] 14年度に作成した刺激装置・分析システムを用いて吸湿・吸水素材による接触刺激を与えた場合の感覚官能値と生理値を測定した。吸湿・吸水素材による接触刺激の効果は、運動中や暑熱環境下で発汗中・発汗後の人間の反応として適用できると考えられるために、これらの結果を基に積極的な快適衣服の設計指針を作成した。 次に、この指針に則ったスポーツシャツを作成し、指先血流量分析システムと測定法を用いてフィールドデータの収集を行った。その結果、湿潤衣服の肌触りの違いは、被験者の熱・水分移動特性に影響を及ぼすだけでなく、着用感にも影響を及ぼすことが明らかになった。
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