研究概要 |
本研究の目的は,高齢期夫婦のどちらか一方が要介護状態となることによって,配偶者との関係性がいかに変容し,また介護-被介護関係に機能しているのかを明らかにすることである。一年目にあたる平成14年度は,はじめに理論的検討として,家族内の介護-被介護関係の質を規定する要因や,高齢期夫婦の心理的適応などに関する内外の研究動向をふまえ,先行研究の成果とそれらの問題点について整理した。その上で,在宅介護者を対象に,以下の調査研究を行った。 本研究では,まず対象者を要介護高齢者が配偶者か否かによって区別するとともに,配偶者を介護している場合,どのような関係性を配偶者と有しているかについても着目し,関係性ステイタスの観点から分類した。その上で,介護役割が介護負担感さらには生活満足感に及ぼす影響について検討した。また,その影響過程に作用すると考えられる要因として,基本的属性や要介護レベルの他に,介護者のソーシャル・ネットワークおよび社会参加の機能についても検討した。なお,本年度の分析データは質問紙法によるものであるが,対象者の一部に対しては,来年度以降の研究計画を見据えて,半構造化面接による聞き取り調査も実施している。 分析の結果,配偶者に対する介護を行っている場合,関係性ステイタスによって介護役割が心理的適応に及ぼす影響過程は,異なる可能性が示唆された。さらに,介護役割への心理的適応において,介護者のソーシャル・ネットワークおよび社会的活動への参加が重要な要因であると推察された。
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