研究概要 |
マサバ糠漬け「へしこ」は、近海で豊富にとれるマサバを塩漬け工程を経て、糠漬けにして発酵させることにより保存性を高めた、福井県若狭地方の郷土食である。約12ヶ月間と長い製造期間を短縮すること及び塩分含量の高い製品を低塩化することを目的に、糠と調味料の混合物をあらかじめ一定条件で発酵させた発酵調味糠を作成し、その発酵物をマサバと合わせ、さらに発酵させてへしこを製造する方法を検討した。 発酵調味糠の作成は、糠と調味料の混合物に、添加物として乳酸濃度(1%)を一定とし、従来法でへしこを製造した時にできた糠(へしこ糠と呼ぶ)の発酵種として添加の有無,食塩濃度(3%又は6%)及び発酵温度(25℃又は30℃)の条件下で2週間から8週間発酵させた。マサバの下処理には,低塩化のため重量の5%の食塩を振り塩する方法と食品用脱水シートを用いる方法を比較検討した。調味発酵糠に下処理したマサバ切り身を漬け込み,引き続き5ヶ月間発酵させた。 その結果,へしこ糠添加の有無,塩分濃度,発酵濃度に違いにより,糠漬け後のマサバの成分に違いが見られた。発酵の指標となるペプチド量の変化からは,発酵期間は2週間がよいことが明らかになった。栄養成分中の特に脂質栄養に着目し,過酸化脂質量と抗酸化ビタミンであるビタミンEを測定したところ,へしこ糠の添加によりマサバ中のビタミンE含量は高く,過酸化脂質の生成を抑える可能性が示唆された。また,マサバの下処理方法は,食品用脱水シートを用いた方が,過酸化脂質の生成を抑えることに有効であった。 今後さらに,脂質栄養の点から望ましい発酵条件及び下処理条件を検討するとともに,官能検査を実施し,おいしさの面からも望ましい条件を明らかにしなければならない。
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