研究概要 |
復元生の良い凍結乾燥食品を作るには、冷凍保存のようにより微細な氷結晶にすれば良いのではなく、適度な大きさの氷結晶を均一に生成する必要がある。よって、適度な大きさの氷結晶とはどの程度なのか、またそのような氷結晶を均一に生成するために必要な冷凍条件(圧力、温度)を検討した。 充填豆腐(30×30×15mm角、3個)を真空包装し、食品高圧処理装置(神戸製鋼所製、Dr.Chef)で0℃以下でも凍らないの領域(不凍域:液相)内で圧力および温度を変動させて圧力移動凍結をおこなった。実用性の面から圧力によるタンパク変性やエネルギー効率を考慮し、50〜150MPa、-5℃〜-15℃の範囲内で検討した。対照として、冷凍庫内(-20、-30、-80℃)で大気圧下(0.1MPa)の空冷による冷凍もおこなった。以上の条件で冷凍した試料を、凍結乾燥機(ヤマト科学株式会社製、Neocool Freeze Dryer DC56A/56B)を用い約24時間かけて乾燥物とした。乾燥物は75℃の熱水に浸漬し復元した。 大気圧下で空冷したものは樹枝状に氷結晶が成長し部位によりサイズにばらつきがあったが、圧力移動凍結した試料では全体にほぼ均一なサイズの丸みを帯びた氷結晶が生成していた。各試料の氷結晶サイズは、0.1MPa,-20℃(約300×10^3μm^2)》0.1MPa,-30℃>50MPa,-5℃>150MPa,-5℃≧100MPa,-5℃>150MPa、-15℃≒100MPa、-10℃≧0.1MPa、-80℃(約1×10^3μm^2)であった。冷凍保存後解凍した試料では氷結晶のサイズが小さい程物性の変化が少ないが、凍結乾燥後復元した場合は150MPa,-5℃および100MPa,-5℃で冷凍した試料が最も未処理の物性に近かった。この時の氷結晶サイズは3×10^3μm^2前後であった。 すなわち、圧力と温度を組み合わせることにより凍結過程で氷結晶のサイズや形をコントロールすることで凍結乾燥食品の品質を向上させることができる可能性が示唆された。
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