研究概要 |
小腸上皮細胞細胞における外来性抗原処理過程では,抗原の取り込みに続く細胞内での抗原プロセシングが重要である.しかしながら,小腸上皮細胞における外来性抗原のプロセシングやそれに関与するプロテアーゼ等は詳細に検討されていない.またasparitc proteaseは抗原提示細胞において重要な役割を果すことが知られている.そこで本研究は小腸上皮細胞様に分化するヒト大腸腺癌由来細胞株Caco-2を用いて,卵白アレルゲンであるオボアルブミン(OVA)の粘膜透過性やプロセシングにおける,aspartic proteaseの影響を,その阻害剤であるpepstatin Aを用いて検討した. 1.Caco-2細胞lysateによるOVAプロセシングへの影響 Caco-2細胞のlysateとOVAをpepstatin Aの存在下でin vitroによるインキュベートを行い,分解の程度をwestern blottingにて検出した.Caco-2細胞lysateとインキュベートすることでOVAはいくつかのペプチド断片に分解されたが,pepstatin Aの存在下では分解の程度が抑制された. 2.粘膜透過性への影響 コラーゲンコートした透過性のある膜上で培養したCaco-2細胞に,pepstatin Aを2時間添加した後,OVAの上端側から基底膜側への移行量をELISA法にて測定した.Pepstatin Aを添加した群ではOVAの通過量が減少し,粘膜通過を抑制することが示された. 以上より,Caco-2細胞における外来性抗原の処理機構において,asparitc proteaseが抗原のプロセシングや輸送に関与し,抗原ペプチドの生成や抗原提示過程で重要な役割を果していることが示唆された. 炎症性サイトカイン存在下でのaspartic protease阻害剤の影響についてはさらに検討を進める余地があり,今後の検討課題である.
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