昨年度は、卵白アルブミン(OVA)と共にコレラ毒素(CT)をマウスに経口投与した場合、OVA特異的なIII型およびIV型アレルギーが著しく誘導されることが示された。本年度は、昨年度に引き続き動物を用いて、コレラ毒素以外の腸内細菌外毒素が、OVAに対するアレルギー反応を引き起こすか否かを検討した。また、食物アレルギーを発症している患者および健常人から採取した血液より血清を分離し、数種類の腸内細菌外毒素について、ELISA法を用いて特異的IgG抗体価を吸光度測定した。実験には、CTの他、緑膿菌のエクソトキシンA、ディフィシル菌のトキシンA、および黄色ブドウ球菌のエンテロトキシンB(SEB)といった、腸内細菌外毒素を用いた。 その結果、マウスにおいては、SEBをOVAと共に経口投与した場合、OVA特異的な抗IgG1抗体の産生、および脾臓T細胞の増殖反応が観察された。つまり、SEBもCT同様、動物において、OVA特異的なIII型およびIV型アレルギーを誘導することが明らかになった。一方、トキシンA、エクソトキシンAに関しては、アレルギー誘導能は認められなかった。 また、食物アレルギー患者と健常人の血清において、CT、エクソトキシンA、およびSEBに特異的なIgG抗体が検出された。エクソトキシンA特異的なIgG抗体価においては、食物アレルギー患者群は、健常人群よりも高い値を示した。 以上より、動物においてはCTとSEBといった腸内細菌外毒素は、OVAに対するIII型およびIV型アレルギーを誘導することが示された。一方、食物アレルギー患者においては、腸内細菌外毒素であるエクソトキシンAに対する免疫反応が高いことから、健常人よりもこの外毒素に曝露されている可能性がある。動物実験および患者血清を用いた本研究より、腸内細菌の外毒素は、食事性タンパク質に対するアレルギー反応の誘導に深く関与することが示唆された。
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