研究概要 |
柑橘類由来の2つのポリメトキシフラボノイド類(タンゲレチン、ノビレチン)はガン細胞増殖阻害作用、血糖値低下作用および高血圧低下作用を示すことから、最近注目されている。昨年度はラット肝ミクロゾーム(Ms)を用いた代謝実験および糞尿中代謝物の検索を行い、その結果、代謝物としてタンゲチンから4種類(3種のOH体および3',4'-diOH体)が、ノビレチンから5種類(3種のOH体、2種のdiOH体)が検出された。そこで本年度は、ハムスター肝Ms、モルモット肝Msおよびヒト肝チトクロムP450(市販)によるin vitro代謝を調べた。その結果、代謝パターンおよび代謝活性の強さに大きな種差があることが明らかとなった。すなわち、全代謝物の生成活性はモルモット>ラット>ハムスターの順であった。また、抗体阻害実験から、上記代謝物の生成には、ハムスター肝Msでは、CYP1A2およびCYP2A8が重要であること、一方、モルモット肝MsではCYP2B18およびCYP1A1が重要であることが示唆された。さらに、ヒト肝P450に関しては、CYP1A1、CYP1A2およびCYP3A4の関与が明らかになった。 次に、肝臓以外の臓器として小腸および腎9000xg上清を用いてタンゲレチン代謝を調べた。両動物において代謝活性はいずれも肝に比べ数100分の1と低いものの、ラットではM-1(6-OH体)が腎で、また、モルモットでは小腸と腎のいずれでもM-1(6-OH体)とM-3(4'-OH体)が同程度生成された。 さらに、両フラボノイド類の新機能の検索の一環として、ストレプトゾシン(STZ)投与により糖尿病を発症したラットの肝Msを用いたノビレチン代謝を調べ、健常Wistarラット(対照)と比較した。その結果、対照群とSTZ群のいずれでも、M-1、M-2(OH体)およびM-3が生成された。しかしながら、M-1はSTZ群で対照群に比べ、有意に減少していた。一方、M-2とM-3は逆に対照群より有意に増加していた。以上の結果から、糖尿病を発症したラットでは、フラボノイド類代謝に関与する肝P450の組成が対照群とかなり異なることが示唆された。本研究では両フラボノイド類を飼料とともに病態ラットに摂取させ、病態因子がどう変化するか調べるには至らなかった。今後の検討課題である。
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