今年度は、再度、カリウム刺激を定期的に与えた培養下での細胞の働きの違いを比較検討した。刺激の添加方法は、50mMK^+の刺激を2日に1度2分間与える条件で行った。 その結果細胞形態は、擬似群では、刺激添加操作(細胞を培地から出し入れする操作)自体のストレスの影響がでていたと推察されるが、刺激群においては、刺激添加操作ストレスにも耐えうるほど、細胞体が大きく神経突起の好成長がみとめられた。 培養10日目のLDH活性値は、コントロール群と比較し擬似群および刺激群ともに有意に低かった。擬似群のLDH活性値が低下した原因については、細胞数も有意に減少していること、観察結果からも細胞体や樹状突起が他群と比較して弱々しくみられたことから、細胞全体の働きが落ちたことによるものと推察される。しかし、コントロール群より刺激群のLDH活性値が低下した理由は、擬似群とは異なり、細胞数の減少もみとめられておらず、細胞体や樹状突起の大きさや太さやネットの形成具合は他群と比較して発達していたことから、TCAサイクルの方が解糖系よりも働いている状態と考えられる。LDH活性の高いコントロールに比べ、刺激群では、ATP産生を行って神経活動を行っている、いわば、生体内の脳神経細胞に類似した神経活動が行われている可能性があり、その結果、LDH活性が低下したと推察されるだろう。 このことより、本研究で行ったカリウム刺激を加えながらの培養法は、生体細胞に近い機能を持つ培養神経細胞を様々な研究に利用することができる可能性を深めた。さらに、生体内の脳と同様な神経活動が行われているかについてはK^+刺激より神経伝達に関わりのある酵素であるChAT活性が高まったとの報告があり、さらに、神経伝達物質放出量などを検討する必要があろう。
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