本研究では、日常の食生活から血栓症の予防を目的として、種々の微生物が用いられている発酵食品、特に魚を原料とする水産発酵食品から心筋梗塞や血栓症などの原因となる血栓の形成を抑制する血液凝固抑制物質(抗トロンビン活性物質)および血栓を溶解する線溶酵素などの血液関連生理活性物質を生産する微生物の検索を試みた。 1.水産発酵食品である鮎うるか、このわた、めふん、カツオキナーゼの存在が明らかになっている酒盗について、線溶酵素活性および抗トロンビン活性の測定を行った。その結果、線溶酵素については酒盗に匹敵する活性が鮎うるかとこのわたにみられ、抗トロンビン活性についても同様に、鮎うるか、このわた、酒盗で顕著であった。 2.血液関連生理活性物質を有する発酵食品の原料となる食品について、線溶酵素活性および抗トロンビン活性を測定した。淡水魚としてアマゴ、アユ(半天然)、アユ(養殖)、イワナ、ニジマスを、海水魚としてアジ、イシモチ、カツオ、サバ、サンマ、タチウオ、ツバス、イカを用い、各組織における酵素活性を調べた。その結果、線溶酵素活性は、淡水魚では胃、腸においてみられ、肝臓や筋肉には全くみられなかった。海水魚でもほとんどのもので、同様の結果が得られた。抗トロンビン活性についても、ほとんどの淡水魚、海水魚で胃と腸に顕著にみられた。 3.線溶酵素活性および抗トロンビン活性が顕著に見られた鮎うるかについて、ペプトン・ブイヨン培地(細菌用)、マルツエキス培地(酵母・カビ用)を用いて数種の微生物を分離した。これらを同液体培地で旋回培養し、菌体内および菌体外の酵素活性を調べた結果、全くその活性はみられなかった。 平成15年度はこれら微生物の培養条件を変えてさらに活性の有無を調べ、活性がみられた場合は、それが鮎うるかのものと同一であるか、さらには原料となるアユの胃腸内の酵素との違いも検討したい。
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