本研究では日常の食生活から血栓症の予防を目的として、種々の微生物が関与する発酵食品、特に魚を原料とする水産発酵食品に着目し、血栓を溶解する線溶酵素および血栓の形成を抑制する血液凝固抑制物質(抗トロンビン活性物質)などの血液関連生理活性物質について検討することを目的とした。 平成14年度は、鮎うるかやこのわたに、カツオキナーゼの存在がすでに明らかになっている酒盗に匹敵する活性を有する線溶酵素や抗トロンビン活性物質の存在を認め、さらにアユをはじめとする5種類の淡水魚、アジをはじめとする8種類の海水魚のほとんどすべての胃や腸にこれらの血液関連生理活性物質の存在を示唆した。以上の結果から平成15年度はさらにその詳細について検討した。 1.鮎うるかから各種培地を用いて微生物の分離を試みた結果、ペプトン・ブイヨン培地、マルツエキス培地を用いた好気培養より、嫌気条件下でのBL寒天培地での生育が大変良かった。 2.1より分離した微生物を肉エキス(カツオ)-グルコース培地で培養したところ、10%NaClの存在下でも生育が顕著であり、耐塩性のあることがわかった。しかし、10日間の培養では菌体外における血液関連生理活性物質の存在は認められなかった。 3.鮎うるかから10mMリン酸緩衝液(pH7.0)でホモジナイズし調製した粗酵素液を硫安分画し、さらにBio-Gel P-100を用いたゲルカラムクロマトグラフィー(1.0×30cm)で分離した。そのうち、線溶活性を示すフラクションを集めSDS-PAGEを行ったところ、約10kDaの比較的低分子の酵素であることがわかった。またこれらのフラクションには抗トロンビン活性も認められた。 4.鮎の腸を3と同様に精製を行ったところ、鮎うるかの線溶酵素とほとんど近い分子量を持つ物質であることがわかった。
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