研究概要 |
本研究は,「加法構造と乗法構造という2つの数学的構造を持つ逆思考問題の間での問題表象の構成の様相,特に,その相違や発達的変容・転移可能性」の実態を探究することを大きな目的としている。 本年度は,「いくつかのタイプの逆思考問題の解決における問題表象の構成の特徴」を明らかにすべく研究を行い,その成果の一部は裏面の学会発表論文集の論文となっている。そこでは,「逆思考問題」に関する大まかな定式化・特徴づけと共に,逆思考問題の解決過程における問題表象の構成にかかわる特徴,及び逆思考問題の解決に際する教育的含意について議論した。具体的な成果としては,加法構造を中心とした議論ではあったが,逆思考問題の解決過程における問題表象の構成の特徴に関して,Vergnaudの図式とRiley&Greenoのモデルを頼りに,「統合的な問題表象の必要性」「問題表象の変容における部分-全体スキーマの関わり」などを示唆した。また,加法構造・乗法構造・初期の代数といった内容の学習においても逆思考問題は重要な役割を果たすことを,教育的含意として示唆した。 さらに,本年度後半に本研究分野における最近の米国での学位論文を入手することができたので,現在はそれらの論文のレビューを行っている最中である。また,来年度の課題としては,具体的な問題セットと構造的なインタビューにより,特定の逆思考問題群に対して児童たちがどのように問題表象を構成し変容させていくかに関して,データを収集・分析をすることが挙げられる。
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