研究概要 |
本研究は,「加法構造と乗法構造という2つの数学的構造を持つ逆思考問題の間での問題表象の構成の様相,特に,その相違や発達的変容・転移可能性」の実態を探究することを大きな目的としている。本年度は,特に,加法的な逆思考問題と乗法的な逆思考問題による具体的な問題セットを作成し、それらによる構造的インタビューを行うためのインタビュースクリプトの作成,さらには基礎的なデータの収集を目標に掲げた。 結果的には,具体的な問題セットの選択・作成と,インタビュースクリプトの第一段階での作成という目標は達成されたものの,インタビューの好時期を逃し,被験者の確保に手間取ったため,インタビュースクリプトを実験的・探索的に洗練するところまでには至らなかった。そこで,インタビュースクリプトの精緻化と具体的な実験的データの収集は来年度の優先的な課題とし,本年度の後半は,昨年度後半に入手した本研究分野における最近の米国での学位論文のレビューを継続させた。 文献レビューでは,G.A.Goldinが指導教官となった学位論文を集中的にレビューしたが,特に,構造化されたインタビューの方法論,方略的問題表象と問題解決能力・問題解決過程との関連については示唆的であった。これらの示唆を受け,現在は,「方略的表象と心像的表象の相互作用が問題表象の構成・変容を促し問題解決を進行させる」という問題解決過程のパターンについて議論する学会発表論文を検討中である。
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