研究概要 |
本研究は,「加法構造と乗法構造という2つの数学的構造を持つ逆思考問題の間での問題表象の構成の様相,特に,その相違や発達的変容」の実態を探究することを目的としている。特に,本年度は,前年度までにある程度達成された「いくつかのタイプの逆思考問題の解決における問題表象の構成の分析」に基づき,「加法構造を持つ逆思考問題と乗法構造を持つ逆思考問題の間での表象構成の様相の相違」や「加法構造の逆思考問題は解けるが乗法構造を持つ逆思考問題を解けない児童の問題表象の構成の様相,及びその児童の問題表象の微視的変容の様相」について分析を行うことを目標にした。 そこで,まず,加法構造の逆思考問題と乗法構造の逆思考問題からなる同一の記述式問題セットを小学校第2学年から第6学年までに課し(各学年の被験者は80名弱で,総数は388名),その結果を基に各学年から数名ずつの被験者を選定して,インタビュー調査を行った。得られたデータに関しては,(1)加法構造と乗法構造の差異による問題表象構成の差異,(2)学年間での発達的様相の差異,(3)加法構造の逆思考問題は解けるが乗法構造を持つ逆思考問題を解けない児童の問題表象の構成の微視的様相,について分析を行った。 上記(1)(2)に関しては,記述式問題のデータを基に分析を行い,その大まかな結果を,裏面〔雑誌論文〕欄の論文にまとめ,報告をした。当該論文で得られた知見は,「第2学年に見られる加法構造の問題間の正答率のギャップが第3学年では解消されるという傾向が,同学年間での乗法構造の問題群の正答率間においても見られる」という点と,「第2学年の児童でも4割5分程度が逆思考問題を解決できた」という点であり,この2点について議論がなされている。(3)の結果に関しては,報告論文を準備中である。
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