本年度は2001年12月に科学技術政策研究所より発表された「科学技術に関する意識調査」の個票データを中心に二次分析を行った。主成分分析、因子分析、共分散構造分析等の手法を用いて分析した結果、理科教育の成立基盤としての、成人の科学・技術理解及びそれに対する関心として、以下のことが明らかとなった。 (1)我が国の一般成人の科学・技術知識について、人口統計学的な属性(年齢群、性別、学歴、居住区域の都市規模)にかかわらず広く理解されている「一般的知識」が存在する。 (2)我が国の中学校理科で扱われる内容は、「一般的知識」の形成に深く関与しており、高校での内容は回答者の社会的属性に基づく知識格差が生じうる内容となっている。 (3)平成元年改訂の学習指導要領に基づく、中等科学教育は、本調査に限れば、知識レベルの低下を引き起こしているとはいえない。 (4)昭和53年版以降の世代は、それ以前の世代に比べ、全体的な関心度は低いが、「日常的-科学的問題関心度」についてはより科学的な志向が見られる。 (5)科学的知識・理解度について、昭和45年版世代以降の有意な低下は見られなかった。 (6)成人の科学技術に関する知識理解度、科学学習歴、及び科学技術に関する注目度(Public Attentiveness)の構造的関係について、直接効果として最も高いのは積極的な情報収集活動であり、総合効果としても最も高いのは小中学校時代の理科の好き嫌いであった。 (7)科学・技術に対する注目度については、他分野にわたる全般的な注目度にも影響を及ぼすような潜在的要因が作用しており、その潜在的要因の効果は、「科学・技術に対する注目度」より高いことがあきらかになった 以上の結果について、日本科学教育学会研究会及び南アフリカ共和国ケープタウンで開催された国際学会にて発表を行った。
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