研究概要 |
ティーチング・ポートフォリオは,教員志望学生の教師としての力量を総合的に評価する方法のひとつと考えられているとともに,教師の反省的思考を促し,教師の成長を支援する有効な道具とみなされている.教師教育の強力な道具として注目されるティーチング・ポートフォリオの効果は,ポートフォリオ作成過程における指導者や仲間との会話の質が影響を与えると考えられている.しかし従来のポートフォリオは紙をベースとしており,会話の相手は同じ科目を受講する仲間と指導教官に限られている。教育実習経験のない大学生にとっては教育実習経験のある先輩大学生や教職経験を積んだ現職大学院生らとの会話によって,また現職大学院生にとっては教職経験のほとんどない後輩大学生や教科内容に関する専門家(大学教員)らとの会話によって、これまでとは質の異なる会話が起こり、教師としての成長に影響を与えることが推測される。通常、異なる学年の学習者や大学教員たちは、異なる時間枠の授業に参加しているため同期的に交流することは難しいが、ティーチング・ポートフォリオをデジタル化し,CSCLシステムを利用することで,非同期的な会話が可能になると考えた。 平成14年度は,教員養成系大学におけるデジタル・ティーチング・ポートフォリオ作成について,特にティーチング・ポートフォリオ実践の先進国であるアメリカ合衆国の実践を中心に,具体的なカリキュラムや授業方法ならびにその成果や課題について実地調査及び文献研究を行った。(永田・加藤,印刷中;加藤・永田,印刷中) さらに,教育実習前の大学3年生が,CSCL環境によって,教育実習経験のある大学4年生や現職教員を含む大学院生らと異学年交流しながら学習指導案等を作成・改善する過程をポートフォリオ化する授業実践を行った.(永田他,印刷中)
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