研究概要 |
本研究の目的は,従来のILEで取り扱われてこなかった洞察による学習を積極的に支援するための枠組みの提案とその高度化,そしてその評価である.本研究では既に,洞察による学習を支援するために間接操作・間接実行型MediatorをILEに適用することを提案し,そのモデル化を行い,さらにこのモデルを適用したILEである中学校理科の化学実験を対象とした試作システムEXERTを構築している.洞察による学習は,既に学習者が持っている基本的な知識を状況に応じて使いこなす学習であり,前提として基本的な知識を有している必要がある.我々の試作したEXERTでは,前提としている基本的な知識が欠落している場合,視覚化できる(観察できる)場合は視覚化を行うことで欠落した知識を補うことはできるが,そうでない知識に関しては直接的に教授する方略をとっている.つまり,基本的な知識を持っている学習者であれば洞察による学習が発生するが,そうでない学習者にとっては欠落した知識を教授されることになり,本来の目的である洞察による学習を支援することが十分には行えない.そこで本研究では,これらの問題点を解決するために,(1)洞察による学習の前提となる基本的な知識に関する学習支援を行う環境の設計・開発,(2)(1)で得られる学習者に関する情報を学習者モデルとしてモデル化し,間接操作・間接実行型Mediatorに実装,(3)(2)で得られる学習者モデルの情報からより学習者に適応した学習支援方略の考案,を行うことで,洞察による学習をより積極的に支援する枠組みを提案し,その高度化をはかる. 平成14年度は,洞察による学習の前提となる基本的な知識に関する学習支援を行う環境の設計と学習者に関する情報を学習者モデルとしてモデル化を行った.これらと並行して,本研究の適用分野を広げるために,学校現場でのユーザインタフェースの基礎実験や,動画メディアの教育利用に対する実践評価,さらに来るべき生涯学習社会を見据えた生涯学習支援システムの研究とその評価を行った.これらの研究成果は,国際会議(2件),研究会(2件),全国大会(1件)で発表した.
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