カメラとモニタ画面を介した手話コミュニケーションの可能性と問題点を探るため、以下のような調査・研究を行った。本年度は特に授業場面での利用方法について議論した。 1.授業場面での聴覚障害者のコミュニケーション支援のあり方に関するアンケート調査 聴覚障害者のための短期大学である筑波技術短期大学の授業設備等に関し、授業場面でのコミュニケーションのしやすさ、改善して欲しい点などについてアンケート調査を行った。その結果、「授業時に学生相互に発言する内容を情報として共有することに対する要求が高い」、「学生の座席位置により情報取得のしやすさが異なる」、「カメラを用いた手話コミュニケーション支援に対する期待が高い」などが明らかになった。 2.授業場面での手話コミュニケーションを支援するカメラコントロールシステムの開発 前面のカメラで撮った学生の映像を前面の大型モニタに投影し、学生の手話会話を学生相互に共有できるようにするシステムを開発した。学生の座席位置毎に予めカメラの向きとズームを記憶させ、1ボタンで目的の位置と大きさで学生の映像を捉え、モニタに映し出すことができる。議論する2人の学生の手話映像を全員で共有できるようにするため、同じに2系統のカメラ-モニタをコントロールすることができるようにした。 3.カメラコントロールシステムを用いた授業場面でのコミュニケーション方法の検討 前記のシステムを実際の授業の中で用い評価した。その結果、「講師と学生を同じに視野に入れることができる」、「精神的・身体的負担が少ない」などの利点が確かめられた。しかし、カメラの数が増えると提示される情報が増えるが、学生はどこを見たらいいのか迷っている間に話が終わってしまうなどの問題点も指摘された。
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