本年度は、コミュニケーション行動における基礎的技能として、自閉性障害の語彙獲得に焦点を当てて研究を実施した。具体的には、見本合わせ課題を通じた語彙獲得について、その促進要因を行動分析学的に検討することを目的とした事例研究を実施した。行動分析学においては、語彙獲得の基礎には、刺激等価性の成立が存在していると考えられてきている。そこで、本研究では、音声・絵・平仮名単語間の刺激等価性の成立を目的として指導プログラムの検討を、自閉性障害2名を対象に実施した。この2名の対象児は、音声→絵の関係が成立している一方で、音声・単語間の関係ならびに絵・単語間の関係が成立していなかった。そこで、次のような訓練プログラムを実施した。第一に、絵→単語の関係を形成するための直接訓練を行った(第一訓練)。第二に、1)単語が提示された後、その単語が撤去された条件で、その単語に含まれる文字を構成する課題(遅延構成反応同一見本合わせ課題)、2)文字構成に伴う音声音のフィードバック、の2つの介入(操作)を実施した(第二訓練)。その結果、絵→単語の関係を直接訓練する方法(第一訓練)では効果が十分でなかった一方で、第二訓練を実施することによって、音声・絵・平仮名単語間の関係性の成立が示された。この結果より、遅延構成反応同一見本合わせ課題の実施と、それに伴う教示フィードバックの提示が、直接訓練対象となっていない関係性(音声と平仮名の関係性、絵と平仮名の関係性)の成立を促進する可能性が示唆された。
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