研究概要 |
内面的イメージに基づく教育方法の探究については,マリオン・リチャードソンの教育方法の中で特に重視される内面的イメージの形成トレーニングである「マインド・ピクチャー」に関して,より総合的なデータベースの構築とそれを用いた分析を進めた。また,リーズ大学附属英国芸術教育アーカイブにおいてリチャードソンの指導およびリチャードソン以外の教師の指導による作品について新たに調査し,現存する稀少な資料を見いだした。また,バーミンガム中央イングランド大学所蔵資料から,リチャードソンの往復書簡・未刊行草稿などを調査し,当時の美術理論家であったハーバート・リードの美術教育改革運動との関わりについて明らかにした。美術に関する総合的な知的理解の教育方法の探究に関しては,1920年代を中心にリチャードソンが発展させた教育方法の中から,特に美術批評と当時の近代美術作品を出発点とした制作学習の事例について,バーミンガム中央イングランド大学所蔵資料から検証した。また,現代日本と英国の中等教育における美術カリキュラムの調査をもとに,鑑賞と表現の統合の観点から今後のカリキュラム開発における課題を指摘するとともに,美術科教員養成において,批評を核とした自律的探究の過程を重視した学習支援教材の開発をおこなった。さらに,日本と英国におけるこれまでの美術カリキュラムの適用実態に関する調査をもとに,両国の動向を比較し,我が国における教育研究の可能性について指摘した。これらの成果を第25回美術科教育学会で発表し,さらにいくつかの論文で刊行,また投稿中である。
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