美術の鑑賞教育について本学附属中学校において1.題材「影の採集」(鑑賞・表現実習)2.「さいたま新都心パブリックアート」(鑑賞)3.「デザインの鑑賞」(鑑賞・表現実習)の三つの指導案を作成し研究授業をおこなった。いずれも鑑賞教育を主目的とした授業立案である。結果についてその一部を論文として『大学美術教育学会誌第37号』に投稿した。 環境芸術の観点から歴史的に優れた海外の事例(フランス、デファンス地区)について調査すると共に、現代における事例については、特にアジアの環境芸術を彫刻シンポジウムに関連した都市について現地に赴き視察を重ね(中国・上海、桂林、台湾・高雄)、昨年度おこなった国内の環境芸術における歴史的・社会的観点から取り上げた事例とあわせ、現代アジアの環境芸術としてまとめ、報告書の中で鑑賞題材として指導案を立案したいと考えている。 設置経緯、経過について現地取材、関係機関に取材することを含め多角的に調査を進めてきたが、設置された作品を通じ、改めて直接に鑑賞する意義を強く認識するとともに、歴史(発展過程)、産業、地域文化との関係が、特に設置事業経緯や事業主側にあることが見受けられることが確認できた。これは環境芸術がその地域性と密接に関わりを持つことの証左であり、鑑賞教育を題材として扱う際の手立てとして重要な意味を持つと考える。つまり、芸術作品を鑑賞する際、従来おこなわれてきたその作家が生きた時代やその前後の芸術的関連性から作品を鑑賞すること(知識習得型)に代わり、設置経緯やその作品が創出された背景にある地域の歴史や特質などとの密接な関係を認識し、その観点に基づいて鑑賞教育の題材を扱うことで、従来とは異なる視点(地域性・風土性・生活者の視点)から鑑賞者と作品との関係性をより密接なものとして設定が可能となる。このことは『デザイン』の鑑賞についてより顕著に表れる。また、「総合的学習」や他教科(特に社会科)との連携の可能性を示すものであり。生涯教育のような幅広い年齢層に応じたプログラムの組み立てにおいても重要な意味を持つと結論づけられる。
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