本年度は、主として以下の3点について検討した。 1.イギリスにおける準職業資格(General National Vocational Qualification:以下、GNVQ)の位置づけと概要 GNVQは、伝統的なアカデミックな大学進学を主とする中等普通(上級)資格と、職場における職業訓練を中心とした職業資格との中間に位置づけられる。このため、GNVQの概要を分析すると、学究的内容を主として教えるのではなく、一定の職業領域(例えば、保育やヘルスケア)に必要な知識やスキル(技能・能力等)の育成を意図していることが明らかとなった。GNVQは主として後期中等教育段階であるが、GNVQの理念は、わが国においても重要な示唆を与えるように思われる。 2.イギリスのクロス・カリキュラ・テーマ「キャリア教育・ガイダンス」の位置づけ ナショナル・カリキュラムが導入された直後、教科を横断する学習テーマとして設定された「キャリア教育・ガイダンス」は、職業教育に関する法令が整備されたことにより、初等学校から中等学校までのすべての児童・生徒が学習する機会を得ることとなった。また、2000年度から実施されているナショナル・カリキュラムでは、すべての教科において、職業に関連した学習内容について言及することが求められるようになっている。 3.わが国の小学校から高等学校までの『学習指導要領:家庭科』の目標・内容分析 次年度以降の本格的分析に先立ち、平成10・11年度告示の学習指導要領:家庭科についての目標・学習内容(スコープとシークウェンス)を整理・分析した。その際、欧米(とりわけイギリス)で提唱されている「キャリア教育」の定義についてまず明らかにし、その定義を視点として、わが国の普通教育としての家庭科教育には、そのような目標や内容が含まれるかを分析した。
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