2002年は日韓国民交流年ということで、音楽に関する日韓交流の催しが数多く開催されたことを鑑み、その中から、2002年4月に横浜で行なわれた高木東六作曲オペラ「春香」の53年ぶりの復活再演について、集中的に研究、調査した。そもそも高木東六作曲オペラ「春香」については、これまでも基礎研究を重ねてきたが、復活再演が実現するに際し、基礎研究が復活再演の現場に応用されることを意図し、地域あるいは社会への発信型の研究発表を行なった。 オペラ「春香」の公演プログラムでは、基礎研究でまとめてきたオペラ「春香」の構想から完成、初演までの経緯に、さらに53年ぶりの復活再演までの道程について加筆し、オペラ「春香」を概観するのに最も詳しく、かつ平易に記述した資料として、公演関係者および聴衆より高い評価を得た。 中・四国大学音楽教育学会における口頭発表では、オペラ「春香」再演の経緯を、国際理解教育の話材として、その概略を示した上で、日韓両国でどのように活用していくことが可能かを論じた。 東洋経済日報では、在日韓国・朝鮮人の戦後の音楽活動を視点にすえた上で、オペラ「春香」の交流事例がどのように評価されるべきかを中心に論じ、韓日音楽交流の金字塔として位置付け、音楽交流の模範的な事例として、広く知られるべきであることを提言した。この論考は特に在日韓国・朝鮮人読者からの大きな反響を得ることができた。
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