1.目的:ライフステージを通しての吃音支援の一環として、遊戯的要素をとり入れて言語指導を試みた重度吃音学童3例について検討した。 2.方法:(1)対象児:事例A:発吃4歳6ヵ月の7歳0ヵ月の男児。吃音以外に障害なし。吃音の意識・回避反応あり。事例B:発吃3歳6ヵ月の8歳10ヵ月の男児。吃音以外に障害なし。吃音の意識・回避反応あり。事例C:発吃6歳0ヵ月の軽度脳性麻痺(日常の運動機能に支障なし・構音障害なし)を伴う10歳3ヵ月の女児。吃音の意識・回避反応あり。3例共にアイオワ式吃音重症度評定尺度による初診時重症度7。(2)言語指導:大橋(1993)等を参考に、本指導方法を考えた。(1)メトロノーム様玩具に合わせて母音部をひき伸ばし気味に発話。(2)カメ(ゆっくり)、蛙〔1モーラ(あるいは1音節)ずつ〕、柔軟性に富むぬいぐるみ(力を抜く)、蝶(軽く)などの動きにたとえた発話。(3)劇遊び:歌唱・斉唱・復唱等・吃音が抑制されやすい条件をとり入れて実施。指導場面には親も同席、参観および随時指導に参加してもらった。教材は持ち帰らせ、親には家庭でも無理のない範囲で本言語指導を本児と一緒に試みてもらった。(3)遊戯療法:言語指導終了後、若葉(1990)を参考に実施。(4)環境調整:若葉(1999)を参考に母親面接を通して実施。 3.経過:指導は週1回あるいは隔週1回のペースで実施。本指導を通して、事例Aは治癒、事例Bの重症度は2〜1の範囲に、事例Cの重症度は3〜2の範囲に軽快。事例B・C共に回避反応は消失。 4.考察:重度吃音児に環境調整とともに遊戯的要素をとり入れて言語指導を行うことの効果が示唆された。
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