研究概要 |
本研究は,学生のボランティア活動を基盤にしている。そのため,研究初年度の平成14年度は,研究目的I-(1)の「定期的な造形教室の開催」を目指し,環境整備を行った。その具体的な実績は,(1)美術科のみならず他学科の学生に迄ボランティアの幅を広げた,(2)患者さんに適した造形教室の実施方法の検討・改善を行った,(3)造形教室から派生した学生のボランティア活動への積極的な参加の実現,等である。また,多様な造形的ボランティア活動の機会を学生に提供し,学生が,自らの体験を通して各ボランティアの内容の違いを学び,本ボランティアの在り方を検討する機会を設けた。その内容を『造形・美術ボランティア概念についての一考察』に著した。 次に,目的I-(2)「造形教室での実践から得た情報・観察記録の分析」では,造形教室での実践を記録し,それを基に筋ジストロフィー症の患者さんの造形活動における身体運動を分析した。さらに,健常者の造形活動における身体運動のデータを集め,患者さんの動きとそれとを比較し,筋ジストロフィー症の患者さんの身体運動の特徴を分析した。結果は『筋ジストロフィー症の患者さんのための造形教材の開発No.1』に挙げ,そこでは,基本的な描画の線及びそれに対応する身体運動を明らかにし,描画における人間の基本的な身体運動の類型を示した。 さらに目的I-(3)「患者さんが望み且つ患者さんに適した教材の条件の考察」については,まず,患者さんやボランティアの学生に話を聞き,その中から,患者さんが希望する造形活動と患者さんに可能な造形的身体運動の内容を集約した。次に,これらのデータに加え福祉機器展等で得た情報を基に,教材開発の専門家との研究会を重ね(目的II-(1)),そこから,開発に適した造形教材の条件を整理して,「教材及び治具の開発」(目的II-(2))のための考察を行った。
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