本研究は、様々な社会的地位にある人々に適切な表現(丁寧表現)を用いて英語で「アドバイス」を与えるという語用力に焦点を絞り、その習得過程と英語学習環境との関連性について考察するものである。カナダあるいはアメリカに1年間留学する日本人大学生約150人(実験群)と、留学せずに日本で英語を学習し続ける学生約150人(統制群)を被験者とすることで留学の影響をより明確にすることを試みている。 平成14年度は、各被験者の語用力レベルに関するデータを以下の手順で収集した。 (1)実験群が留学する3ヶ月前(4月末)と直前(7月末)の2回、語用力を調べるために作成されたアンケートを使ってデータを収集した。さらに、実験群の学生の中から20人を対象に彼らの日常生活における英語使用の実状について聞き取り調査を行った。 (2)実験群からデータを集めるのと同時期に、統制群からも同じ調査方法を用いてデータを2回収集した。 (3)実験群が留学して3ヶ月および6ヶ月経った時点(11月末、2月末)に、海外の被験者に郵送でアンケートを送付し、記入後、返信してもらった。また、ほぼ同時期に、統制群からも同じ調査方法を用いてデータを収集した。 平成14年度に予定していたデータ収集は順調に進み、当初予想していた以上のアンケート回答率を両群から得ることができた。集められたデータのコンピューターへの入力は適宜行っているが、分析はデータ収集が完了する平成15年10月以降に行う予定である。 また、平成14年12月に行われた国際応用言語学会(於:シンガポール)の発表で用いたデータは、日本人の英語の語用力レベルを測るテストをコンピューターベース化できないかを探る上で重要な資料になると思われる。
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