タスクの複雑性の違いが英文読解に与える影響を明らかにするために、日本人大学生103名を対象に3種類の課題条件(統制群、設問回答群、アウトライン作成群)のいずれかにおいて、2種類のテキスト(物語文と説明文)の理解度と読解過程を調査した。 理解度の分析結果 読解直後と一週間後に想起した理解内容を分析した結果、タスクの影響は見られなかったが、テキストタイプの違いが一週間後にまでも影響を与えており、物語文より説明文の想起及び記憶が困難であることが明らかになった。背景知識や、修辞構造などの諸特徴が原因と考えられる。特に統制群の説明文の一週間後の想起率が低いことから読解中にタスクを与える方が、説明文の理解内容を保持する効果が高まることが示された。 読解過程の分析結果 発話プロトコルデータを用いて読解中に用いたストラテジーを、低位レベルプロセス、高位レベルプロセス、メタ認知プロセスに分類し、各タスク条件における使用頻度を調査した。その結果、統制群では低位レベルプロセスの使用が多く、設問回答群とアウトライン作成群では高位レベルプロセスとメタ認知コメントの使用が増えた。特にアウトライン作成群では何度も読み返したり、推論を積極的に行ったり、内容をまとめてみたりする必要性が高いことより、タスクの影響が顕著であった。 考察 読解中のタスクは、第2言語読解において、プロセスのレベルでは影響を与えるが、理解度のレベルには影響しないことがわかった。このことは、第2言語の読解指導において、テキストタイプとの関係を鑑みて最適なタスクを選び、従来の評価方法に加え、読解過程や、複数の概念レベルでの理解を反映する評価方法を用いることを示唆している。
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